合気道小林道場北京正心館講習会 その2 |
次は同じく入身投げです。前に座っている袴の人を呼び出し私が投げ、次ぎに相手に私が投げられる番になると途中で技を止めてしまいます。言葉が通じませんので私が何度かゼスチャーで示しましたが投げません。その内に何かぶつぶつ言い出しました。私は言葉がわからず戸惑っていますと、中国語が堪能な弘明副道場長が通訳してくれました。
「道場長、彼が言うには、私達は3段以上の先生は投げられません」といっていますと通訳してくれました。始め意味が分かりませんでした。後で聞くと、こちらでは3段以上の人は受けを取らない習慣があるそうです。従って稽古中も3段以上の人が相手の時は、投げる手前までで技を止めています。確かに小林道場以外の先生の多くは、指導する時弟子の受け身など殆ど取りません。自分の説明演武だけです。
講習会が始まる前に北京の色々な道場の責任者が私に挨拶に来ました。その中の一人が最近日本の本部道場に行き3段を取得してきたと挨拶したのを思い出しました。まだ中国の合気道において3段が最高段位なのでしょう。
その為にその先生の弟子達は指導する先生を投げた事など無かったのです。先生を投げる事など思いもよらなかったのです。ですので「3段以上の先生は投げられません」という言葉が出てきたのです。
合気道小林道場にとっては考えられない事ですが、意外と他の道場では先生が受け身を取らないのが普通になってきています。これは私の個人的意見ですが本当に合気道にとって憂うべき事だと思います。
次ぎは片手両手取り四方投げです。普通の講習会ではまず先生がもっともらしく説明し手本を示します。私がいきなり両手で持ち四方投げで私を投げるようにと指示します。投げる方は前に出されただけで緊張し、技を指示されたことで頭が真っ白になるようです。結構有段者でもおたおたして間違えます。この頃になると皆私の指導法に慣れてきて自分の道場の人ができないと仲間が勝手に言葉で指示を出し、色々忠告します。それがさらに本人を混乱させ、道場は賑やかになり笑いが起こります。こうなると稽古全般合気道小林道場の雰囲気になります。
そしてあまり普段稽古してない2人取り四方投げと続きます。相手をどんどん変えて稽古するよう指示しました。私、副道場長は走り回って元気よく稽古するようハッパを掛けます。細かい技の説明は一切抜きです。その日は北京も気温が30度近くあり皆汗だくです。私達日本から来た人達がタオルで汗を拭いても北京の人達は汗を拭きません。タオルも持っていません。あまり汗を拭く習慣が無いのです。しかし疲れてきたことは直ぐ分かります。稽古中の相手との会話が多くなるからです。
これ以上体術を稽古するとだらけてきますので、稽古を杖に切り替えました。正心館以外の道場は杖の稽古をしない道場が多いので、講習会に杖・剣を持ってきません。杖の無い人達には代替えとして木剣で杖の代わりをして貰いました。杖の稽古をしている正心館の人達中心に私が指導、初心者は外で副道場長の指導で二つに分かれて稽古しました。
私は上段返しからの八双の左右を号令掛けながらやりました。8割の人達ができないので色々聞いてみると杖の基本を全然練習してないそうです。正心館との合気道小林道場の交流は昨年9月20日(私の誕生日です。)に主席指導員の賀氏が小平道場を訪ねて来て一緒に稽古したのが始まりです。昨年12月末に弘明副道場長が指導に行き講習したのが正式な交流の始まりで、まだ杖などはビデオを見て稽古しているような状態です。
杖の基本はあまり稽古していませんが一部の人は31の杖など綺麗な動きで上手にできました。しかし、基本が大事という事で、八双の基本を中心に稽古しました。外の副道場長の指導では6の杖を向かいあって行い、結構難しい事を指導していたみたいです。
4時45分で稽古は終わり写真撮影となりました。その後は、ホテルでシャワーを浴び、レストランでの打ち上げパーテイに移り、会員と大いに飲み、かつ食べました。贈り物の交換でまた一層盛り上がりました。蘇州の古沢師範はよほど気分がよかったのでしょう。自分でもこんなに酔ったのは中国では初めてと、後日反省していました。蘇州に来て3年半の日本語教師と合気道指導の緊張が一気に解けたかも知れません。翌日蘇州まで8時間汽車に乗ると聞いていたので、無事帰れることを祈るだけでした。
講習会翌日は万里の長城の観光です。ホテルを9時に出発しましたが大渋滞に巻き込まれ、万里の長城に着いたのが午後4時です。賀氏曰く、「小林道場長はめったに北京に指導にこられないのだから、絶対万里の長城には連れて行く。」との事でした。しかし西安から来た人達は11キロ手前で断念し、たどり着かなかったそうです。
合気道小林道場から中国へは、指導部員を年2回派遣する予定でいます。日程は年間予定に載せますので、興味ある方は是非同行して下さい。大陸の正心館の合気道仲間と大いに交流しましょう。