体育課長からの電話

　各大学合気道部員は試験も終わり合宿準備中か合宿中でしょう。私は明治大学体育会合気道部の監督をしていますが、先日２月１８日１０時頃、明治大学体育課から電話がありました。
「合気道部員の法学部Ｏ年ＯＯは試験科目ＯＯの答案用紙に氏名と　体育会合気道部員です。よろしくお願いしますと書き白紙で提出した。法学部の担当教授が激怒して体育課に抗議の電話がありました。合気道部監督として善処を」
　久し振りにやってくれました。最近の学生達はおとなしく、品行方正でこの２０年近く体育課長からの抗議の電話が途絶えていたのに・・・。
合気道部創部からしばらくの間は、やんちゃな学生が多く、また合気道部かと怒られたものです。そのほとんどは、酒の飲み過ぎのトラブルか、正義の味方の喧嘩です。ある面ではこの様な学生気質も私個人ではあっても良いと思います。現代のような大学生や若者に厳しい目を向けている社会情勢では許されないと思いますが・・・。
　私の学生時代は小学校３年生で終戦があり、東京は全て焼け野原になってしまいました。食料、物資そして社会秩序も無く、学校が間借りしていた時代でした。東京、千代田区の富士見小、麹町中が戦災で校舎が焼け、九段小、番町小に間借りし、肩身の狭い思いで学校に通ったものです。そんな中で我々に夢を与えてくれたのが、ラジオを通して水泳の古橋、橋爪選手の活躍です。１５００ｍ水泳で世界新を泳ぐたびに出し、戦争で負け、打ちひしがれていた日本人に大きな勇気と自信を与えてくれました。ＴＶではプロレスの力道山です。街頭ＴＶで力道山が大きな外人を空手チョップで倒す爽快さ、私達も熱狂したものです。野球は巨人軍の川上、青田の赤バット、青バット。六大学野球では長島選手の活躍、大松監督の率いる回転レシーブ東洋の魔女達です。　
　私の母校は当時「スポーツ明治」これが大学のキャッチフレイズでした。各学部の一部の教授は国民に勇気と自信を与えたスポーツの力を知っていましたので体育会運動部に理解がありました。体育会所属の学生は授業の出席は悪いし成績は良くないが大学の名前を高めているという認識があり、試験用紙に柔道部、野球部、ラクビー部とか書いて提出すると単位をくれた先生もいました。残念ながら合気道部は私が３年の時の結成で新参、そんな力はありませんでした。しかしこの風潮も大学紛争で崩れ、体育推薦入学や体育会運動部の学生に対し、教授会は厳しく対処するようになりました。
　団塊の世代や、以前のＯＢが懐かしがり、合気道部のコンパや合宿に「３０年ぶりだ」といって突然行事に参加します。昔はもっと稽古が厳しかったとか学部の期末試験の時体育会だと書いたら単位をくれたとか楽しい思い出話だけをします。
　時には単純な学生がこれを信じ行動する事があります。ほとんどが本人呼び出しで教授に怒られるだけですが、几帳面でまじめな教授が体育課に連絡してきます。そうすると私に体育課長から連絡が入ります。授業の事は教授の合気道部部長にお願いし解決してもらいます。部員としての活動や普段の行動は私の出番です。この５０年間色々な事が有りました。そのことは又の機会に書きます。