住み込み研修制度 |
会員の方から住み込み制度について質問を受けますので合気道小林道場の住み込み研修制度がどういう経過で始まって現在の様になったかを書いてみます。
1969年4月道場が開設されました。道場開設から2~3年経つと合気道の専門家になりたいという希望者や、道場に住み込んで勤めに通う様な熱心な修業者も出てきました。
そんな中、現在ブラジルで指導している鹿内一民氏が所沢道場に内弟子第一号として住み込みました。1974年6月に鹿内氏をブラジルに派遣する事になり、私も同行しました。ブラジルの帰途アメリカのニューヨーク、ボストン、シカゴ、ロサンジェルスそしてハワイを巡回し稽古してきました。
当時は海外でも日本の武道は空手、柔道が有名で合気道はほとんど知名度がありませんでした。しかし昭和30年代本部道場で私と一緒に内弟子をしていた仲間が真剣に各国で普及に努力している姿と、稽古に通っている修行生の態度を見た体験から、合気道は海外で必ず発展するという実感を強く受けました。
翌年(1975年)には台湾、香港、マカオをまわり指導しました。1977年の夏にはドイツ、スウェーデン、フィンランドへと指導に行きました。海外各国の若い合気道修行生達が、本場日本に来て修行する事を熱望している姿を多く見聞きしました。小林道場の基本方針「一人でも多くの人達に合気道を」にしたがって海外からの修行生を受け入れる事を決めました。
1980年に海外から初めての内弟子として、21才のスウェーデン人オーベ氏が3ヶ月住み込みました。当時ヨーロッパから東京までの航空運賃は非常に高く、若くてお金の無い人達は、スウェーデンからモスクワまで列車で行き、シベリア鉄道に一週間乗ってナホトカに出て船で新潟港に着きました。そして新潟から道場に電話を掛けてきて新潟からどの様に行くかを英語で聞いてきました。
電話に出たのは女神様(家内)です。「上野ステイション、チェンジ、ヤマノテライン、タカタノババステイション、チェンジ、セイブシンジクライン、ゲットオフ、コダイラステイション、テイク、タクシー、合気道小林道場」と叫んだらちゃんと来たと自慢していました。たしかに余計なことを言わない単純で完結明瞭な返事です。夜遅く何時間かかったのか分かりませんが無事道場に到着し3ヶ月の修行を真面目に全うして帰りました。
これ以後、話を聞いたスウェーデン人の合気道修行生が続き、フィンランド人修行生も来るようになりました。帰国後この人達がスウェーデン、フィンランドの合気道発展の為の中心的な役割をはたしてくれています。35年以上前ですので六段位の賞状を道主から頂いている人達も何人かいます。その中の一人で、スウェーデンスの首都トックホルの中心地で道場を開設し500名の門弟がいる巨体のウルバン師範です。内弟子に住み込んだ時はまだ22才本当にスマートな青年でした。
海外での合気道が発展するに従い毎年男女の別なく道場に住み込み希望が多くなってきました。ヨーロッパ各国やアメリカ、南米からはブラジル、アルゼンチン、アジアではインドネシア、台湾、韓国などが中心です。滞在は観光目的での道場宿泊を禁止するため最低1ヶ月以上です。日本での観光ビザが3ヶ月なのでほとんどの人達が3ヶ月以内に帰国します。あるドイツ人は身寄りの無い隣の年寄を親身で面倒をみていたら、亡くなった時の遺言でその人の遺産が入り、1年近く住み込みました。
日本での修行を熱望していますが経済的で来られない人達が海外には大勢います。その人達を援助するために、1990年に会員の人達の協力で「むすび基金」という奨学金制度を設けました。この制度により来日する国の幅が広がりました。アフリカのチュニジアやオーストラアのタスマニアからも来ました。現在まで「むすび基金」で40名以上の男女が合気道小林道場で修行しています。
英国ウエールズ出身の女性、アニタさんは以前「むすび基金」で3ヶ月修行して帰国しました。しかし帰国後も小林道場での稽古の継続をしたいと考えました。自分で茨城県取手市の私立高校の英語の先生の職を見つけ再来日しました。週末は学校が休みなので金曜日の夜稽古から参加し、2泊3日で道場に住み込み日曜日に帰っていきます。その生活を2年間つづけています。
現在会社の勤務体制が複雑になっています。3交代制や夜勤明けを組み合わせて平日でも2泊3日を希望する人が出てきました。今年に入ってから平日でも2泊3日の研修を受け入れる様になりました。合気道小林道場の直轄、傘下の会員であれば受け入れますので希望者は指導部まで申し出下さい。
小林道場指導部の各師範もほとんどの人達が住み込みました。私は特別規則を作った分けではありませんが、3年位経つと住み込み生活を終了し部屋を借りて担当指導道場を指導しています。
道場に住み込んで修行した人たちの感想文がホームページに載っています。海外研修生が中心ですが、我々には当たり前でもこんな事に感心するのだと不思議に思うことが書いてあります。是非よんで下さい。

写真上:道主と道場長とウルバン(二人とも今とは違う体形です)

