学習院大学合気道部創立５０周年に思う その１

　学習院大学合気道部創立５０周年の記念行事がありました。招待を受けたのですが、所用があり欠席したところ、記念誌と記念品が送られてきました。

　私は、合気道本部道場指導部に在籍していた昭和４０年（１９６５年）から４２年（１９６７年）に掛けて、学習院大学合気道部を指導していました。最初は多田宏師範が学習院大学合気道部を指導していましたがイタリアへ長期滞在指導にいかれ、次に故金井満也師範が担当していましたが、彼も１年後にアメリカに行きました。三代目の師範として私が指導を担当する事になり約２年間指導しました。この時に合気道部３年部員だった遠藤征四郎本部師範が卒業後に本部指導部に入ってきましたので、２年間で交代したのです。

　学習院の学生達との思い出は僅かな期間でしたので現在、小平道場の朝稽古に来ているOBの木村隆雄さん以外は交流ありません。しかし私も明大、東洋大、埼玉大等に合気道部の設立に努力しましたので、その絡みで学習院大合気道部創立者達の思い出は沢山あります。この事を書いてみます。

　

　今でもよく思い出すのは昭和３１年（１９５６年）頃に本部道場に通っていた学習院大生、大久保武道君の事です。お互いに大学生で元気よく一緒に稽古したものです。大久保君は青森県出身で、彼の父親と二代道主植芝吉祥丸道主が友人で合気道を稽古するようになったと話していました。一週間に２，３回は稽古していました。一緒に食事したとか遊びに行ったと言う記憶は有りません。忘れもしません昭和３２年１１月末に道場で一緒に稽古する約束で別れました。約束した日に来ません。その様な事が今まで無かったので不思議に思っていました。１２月５日の朝の新聞に大きく天城山心中事件として大きく大久保武道君が写真入りで出ているのを見て驚きました。大久保君は学習院大の同級生、愛新覚羅彗生さんと伊豆の天城山山中でピストル心中していたのです。

　皆さんは戦前日本政府が支那に満州国を建設したのは歴史で学んで知っていると思います。愛新覚羅彗生さんのお父さんはラストエンペラーとして映画にもなった元満州国皇帝の愛新覚羅溥儀の弟、溥傑でお母さんは日本人の元華族嵯峨侯爵の娘、浩さんです。大久保武道君と愛新覚羅彗生さんの交際は家の格式の違いから二人の交際を家族の人に反対されての心中と思われます。「天国で結ぶ恋」としてしばらくマスコミが大きく取り上げました。私も身近な友人の自殺に衝撃を受けましたのでこの事は今でも鮮明に憶えています。

　この事で学習院合気道部の発足は遅れ部が出来たのはこの事が起った３年後の昭和３５年（１９６０年）です。学習院大合気道部関係者でもこの事を知っている人はほとんどいないと思います。