学ラン

　
　最近体育会の運動部でも学ランを着る部はほとんどなくなりました。明治大学体育会には４３の部があります。その中でも学ランを着ている部は２，３部です。同じ武道の部でも柔道部、空手部でも学ランは着ていません。合気道部だけです。
　私が１，２年生に学ランは廃止しようと言うと、ほとんどの部員は大賛成です。部の事は各代の幹部に決定権があります。下級生は上級生に絶対服従です。下級生達は行事の時は着たくなくても、必ず学ランを着なければなりません。その下級生が幹部になった時、私が学ラン廃止を話すと今までの各代幹部は必ず「私たちの代は学ラン着用残します」「廃止は下級生に任せます」と言い続け５０年間未だに廃止にはなりません。３年間着続けると変な愛着と誇りが出てくるのかも知れません。
　学ランの歴史を知っていますか？長崎にグラバー邸という観光地があります。グラバーはアメリカの貿易商として長崎に滞在していました。その時期はアメリカでは南北戦争が終わり大量の武器と軍服が余っていました。それに目をつけたグラバーは安く買い、薩長の官軍と幕府に両方に高く売りつけ大金持ちになりました。明治政府は軍人や警察官に服を採用し余った物を大学生が着るようになりました。これが学ランの始まりです。女子学生にはセーラー服、海軍の制服を改良して着せたのです。
　私が大学に入学した昭和３０年（１９５５年）頃は学帽に学ランが普通でした。私服姿の大学生は多少いました。応援団の部員が学生は学ランを着るべきだと叫んでいた時代です。その後学生運動が盛んになると一気に崩れて学生達は学ランを着なくなっていきました。
　明治大学合気道部は３年に一度海外合宿を行っていますが、２０年ぐらい前ハワイ合宿に行ったとき全員学ランを着ていきました。ハワイ入国の時、税関の係員が君たちは軍人かと聞かれ、他大学でしたが、当時大学生だった息子弘明が同行し、彼だけが学生帽をかぶっていたので将校かと思われ待遇が良かったそうです。その時彼の来ていた学ランは、現在明治大学合気道部の誰かが来ています。
　
　学ランは冠婚葬祭何にでも着られます。こんな便利なものは無いと思い私は４年間着続けました。でも現代では殆ど着ている人もいません。現役学生達に学ランに対する意見を聞きてみたいものです。