2008年 11月 23日
デンバー講習会 その2 |

海外指導の時基本的には、金、土、日に講習会を行います。若い時は現地に着いた翌日の朝稽古からなどということもありましたが、60才過ぎてからは2日前に行き、時差ぼけを解消、身体を休めてから万全な体勢で稽古に臨んでいます。自慢は30年間以上毎年何回か海外指導に行きますが病気、怪我で一度も指導出来なかった事が無いことです。(飛行機の遅延、乗り遅れで稽古に間に合わなかった事は何回か有りますが)
デンバーは標高が富士山の五合目と同じくらいの所です。マラソンの高橋尚子選手などの色々なスポーツの選手の高地トレーニング場所として良く名前が出てくるので知っている人も多いと思います。ロッキー山脈の麓にあり、特別な地形なのでアメリカ軍士官学校やパイロットの訓練所、それにどんな核攻撃にも耐える地下司令部があるともといっていました。あの9・11事件の時にはこの地下司令部からブッシュ大統領が指揮を執る予定もあったそうです。
到着した夜と次の日金曜日の18時まで、多少の観光はしましたが充分休養をさせて頂きました。18時から始まった講演会「合気道開祖植芝盛平翁の思いでと当時の合気道状況」です。

植芝盛平翁先生の1,武道家としての面、2,宗教家としての面、3,我々内弟子や身近で先生のお世話した人達が感じた好々爺の面、4,頑固で本当にわがままな年寄りとしての面です。このわがままで頑固な年寄りの面で怒られ、怒鳴られた事が意外と我々内弟子の人間性を高める修行に役たっています。本当に今考えるとこの体験が無ければ現在の私は無かった事や自分で道場を開いた時体験した事などを中心に話しました。
通訳の本間師範も岩間で植芝盛平翁先生の内弟子を経験しています。私の話がアメリカ人の会員に理解出来ない部分、話が飛んだ様な時は会員のアメリカ人達に分かるように補足し通訳してくれました。この点は非常に有難かったです。たいした内容の話では有りませんが、私が植芝盛平翁先生の内弟子として厳しい修行を積み、合気道小林道場を開き、そして日本国内ばかりでなく国境を越えて世界各地に1人でも多くの人達に合気道を稽古してもらいたいと努力している姿と情熱は伝わったのではないかと思います。
25日(土)10時~12時の稽古前に、メディカルチェックが行われました。私が72才ですので、デンバーの標高の高さが身体に与える影響を心配し、日本間会員の世界的に有名な心臓外科医師が私の血圧を計ってOKが出てから稽古開始です。正面に礼、お互いに礼そして準備体操、受け身からです。1回の受け身でも自分で受け身を取ると起きあがる時は呼吸の乱れを感じます。やはり身体には標高差が負担になっている事を感じました。
まず私は日本館では座技を稽古しないと聞いていました。皆に見せる為に私の好きで得意な座技を篠崎受け身に4,5本投げたら篠崎は呼吸ができなくなり、鶏が締め上げられた様な「ヒー・・・」と云う声をあげながら死にそうなっていました。それほど標高が高く、身体に影響があるのです。会員からは私は盛大な拍手をもらいましたが受け身の篠崎は「本当に呼吸が止まるかと思った」と云っていました。

個々の技の説明は一切しません。技の名前を言い「やらせてみて、やってみせる」方式です。師範の私が受講者の受けを取りますと会員から拍手が来ます。アメリカ人は特別な事を高く評価します。合気道小林道場では師範や指導員が生徒の受け身を取るのは普通の事です。しかし国内外のほとんどの道場では非常に珍しい事なのです。私が180cm位の背の高い人の腰投げの受け身を取った時には驚きの声と拍手がしばらく止みませんでした。
稽古参加者は、プロレスラーの様な体格の米国刑務官で格闘技の専門家、最年長83才の会員、本間師範不在時には代稽古している人達、海外各国の日本館支部に派遣されている内弟子達も多くいます。袴を履いている人が7割、色帯の人(日本では色帯は子供達だけですが海外道場では大人も色帯の人を結構みかけます)、白帯合わせて3割です。技や捌きは皆熟知しています。この様な人達に細かな技の解説をしても仕方がありません。皆が感心する大きな捌きと緩急をつけた上下左右の動きで相手を崩し、受けを取る本人は勿論ですが、座って見ている人達に修練の違いを納得させる様に努力しました。また稽古に参加して何らかの楽しさと活力を得られるように元気な稽古を心がけました。

日本間の本間師範が11月22日に来日されました。お会いした時にこう言われていました。「先生の講習会指導の後、年配者が自信を持ち稽古に来るようになり、出席率が上がった」と。この言葉だけて私がデンバー講習会指導は成功したと感じました。
「デンバー日本館」で検索すればホームページが見られます。
日本レストランが有る道場など世界中に有りません。内弟子の住み込む施設もあります。研修環境も最高です。ここまで苦労して成られた本間師範の体験談を聞くのも若い人達には良い勉強になると思います。
日本館に語学研修を兼ねた短期、長期の滞在稽古希望者は、合気道小林道場の指導部に申し出て下さい。
by shihan_aikido
| 2008-11-23 23:43